先月(10月)末から協議の再開された日韓の「軍事情報包括保護協定・GSOMIA(ジーソミア)」について、メンバーに演説してもらいました。
私たちの主張をお聞きくださった皆さんもまた、北朝鮮の核の脅威を考えた時、今回の協議がいかに重要なものか、よくご理解されていることと思います。
しかし皆さん、この軍事情報の包括保護協定には、もっと大きな、歴史的な意義があることを知っていただきたい。
「GSOMIA」の締結は、人類史にとって大きな挑戦の一歩なのです。
この協定はもちろん、北朝鮮の核の脅威に備えるものです。相当な年数を要すると思われていた北朝鮮の核開発技術の急速な発展。今年8月の頭には、ノドンミサイルが日本の排他的経済水域に着弾しました。
そして8月末のSLBM、潜水艦からのミサイル発射実験の成功。これは皆さんにとっても衝撃的な内容だったと思います。こうした危機的状況への対策として、日本と韓国が軍事情報を共有して防備を堅くしようというのがこのGSOMIAです。
また、もっと大きくは中国の侵略行為に対する国際的な包囲網形成を促す意味を持ちます。
南シナ海での人工島建設と軍事化、そして今や常態化し日常茶飯事となってしまった尖閣諸島沖への領海侵犯に表れているように、中国は明確な侵略と拡張の意図を持っています。
彼らは東シナ海、南シナ海、そして黄海(ファンへ)での支配力強化を目指しています。この脅威に日本一国では到底対処できません。
日本と韓国がGSOMIAを締結すれば、韓国側に配備されるTHAAD(最終段階高高度地域防衛ミサイルシステム)と相まって、日本と韓国、そして米国と連携し、三国で中国軍の動きを牽制できるのです。
さらにこれをきっかけにして、同じように中国の軍事的脅威にさらされる台湾、フィリピンとの協力関係を構築すれば、中国の三つの海への膨張に対する、より強固な包囲網が出来上がります。
しかし皆さん、私は日韓の防衛協定締結に、もっと大きな意味を感じています。それは何でしょうか?
皆さん、東アジア地域だけでなく、もっと広い世界に目を向けてみましょう。
私たちはこれまで、二度の世界大戦と冷戦を経て、真の、恒久平和を念願し求望してきました。専制と隷従、圧迫と偏狭をこの地上から永遠に除去しようと、国連を中心に努力してきました。
ところが今、各国はこれまで国際社会が標榜してきた多国間協力のあり方を捨て、自国中心主義に逆行しようとしています。
米国のオバマ大統領による脱「世界の警察」宣言。米国が世界秩序よりも自国の利益を優先する路線を選んだ結果が、今のシリア情勢であり、終わらない内戦と巨大な難民の群れです。
最近の米国・大統領選挙を見る限り、次期大統領がクリントンであれトランプであれ、米国の自国中心主義の流れは変わらないように思えます。
また、英国の国民投票による実質的なEU離脱宣言。統一を目指したEUの夢は、一時の感情に任せた投票で崩れかけています。英国は、今後しばらくは離脱交渉にかかりきりになり、環境問題、難民問題等、国際的な問題に対して果たすべき大きな責務を後回しにせざるを得ないでしょう。
中国、北朝鮮の利己的な侵略行為については言うまでもありません。
では、こうした情勢の中、紆余曲折はありましたが、「日韓防衛協定」が締結に向かっている意味とは何でしょうか?
それは、利己的な自国中心主義に流れようとする世界の動きに対して「NO!」と宣言することなのです。
日本と韓国が、歴史的な葛藤を越え、手を取り合う一歩を踏み出したこと。ここに平和のモデルが創られます。
国連安保理が挫折し、米国、英国が投げ出した道です。誰もが心から「幸福だ!」と叫ぶことのできる世界、人類の夢を実現するための、世界の逆行的潮流に対する挑戦です!
今や、新しい葡萄酒が新しい皮袋に入れられるべき時が来ました。
環境問題や飢餓・難民問題が世界規模に拡大する中、一国中心のナショナリズムに固執していては、衰亡を免れることはできません。
日韓が協力し、さらに米国との連携を強化する。さらにはフィリピン、台湾。そうして北朝鮮の核を抑止し、中国への包囲網を築く。これによって、東アジアに平和を取り戻しましょう! その平和は、心を閉ざしていた二国が手を握り合う、今までよりもっと素晴らしい平和になるでしょう!
挫折しかかった理想への道が今、再び拓かれようとしています。皆さんが共にこの道を歩んでくださることを願います。
UNITE代表 小村聡士
(2016年11月3日の街頭演説より)